ひきこもりニートが10年ぶりに歯医者に行った話

ひきこもりニートが10年ぶりに歯医者に行った話

5年以上前に奥歯のかぶせ物が取れた。なのに俺はそれをずっと放置していた。

治療してもらいたいとは思っていたけれど、食事中に物が詰まるぐらいで、染みることもなかったし、痛みもなかった。だから、ずっと我慢していた。歯医者に行けず仕舞いだった。

だが、最近になってその歯が少し痛み始めた。

最初は1日寝たら治るだろうと思っていたが、1週間経っても治らない。歯の痛みが気になって何もやる気が起きない。歯の痛みを和らげる方法を調べても、全く参考にならない。

ちなみに、俺が歯医者に行きたくないのは、痛いからじゃない。今の痛みが治るなら治療の痛みに耐えるぐらいなんてことはない。お金がない訳でもない。ただ、問診票を書くのが嫌だから。近くで自分の顔をまじまじと見られるのが嫌だから。人と関わるのが嫌だからだ。

結局、2日間悩んだ末に歯の痛みに負けて歯医者に連絡を入れた。ネットで院内の写真や先生の顔を何度も確認し、近場で一番通いやすそうな歯医者を選んだ。

と言ってもネットから予約を入れただけだ。恐らく電話だったら後数日は決心がつかず我慢していたと思う。今は本当に便利な時代だ。ネットで症状を伝えて予約まで入れられる。

翌日、症状と予約を入れた日時の確認電話がかかってきた。

さらっと書いているが、何度も症状を伝えるシミュレーションをしていた。電話中に焦らない様に「右上の奥歯の詰め物が取れたので治療してもらいたいのですが」なんて小学生でも言えるフレーズを声に出していた。そして、電話があるまでは家の中でもずっとスマホをポケットに入れていた。電話が鳴るまでずっと緊張しっぱなしだった。

また、問診票を書く時のために、「歯」や「治療」と言った漢字も練習しておいた。情けない話だが、パソコンに慣れすぎて漢字が書けなくなっているのだ。

ネットで予約を入れた2日後、10年ぶりぐらいに歯医者に向かう。初めてかかる歯医者。

朝から緊張して何も食べていない。

途中で引き返そうとした。痛みを我慢することも考えた。だけど一度引き返してしまうと本当に逃げ出してしまう。だからとにかく無心。何も考えない様に歯医者に向かった。

建物についてからも無心で前に進む。そして受付に直行。

世帯主名が父の名前になっている国民健康保険証を出して、「予約していた〇〇です。よろしくお願いします。」と伝えると、案の定問診票を書いて下さいと言われた。

想定していたことだが、職業、勤務地、勤務先電話番号の記入欄がある。これがあるから、俺は病院に行きたくないのだ。俺は職業は自営と書いて勤務地と勤務先電話番号は未記入で提出した。他の患者がいる前で、「勤務地と勤務先が未記入ですよ」なんて言われたらどうしようなんて不安はよそに、何も聞かれることはなかった。安心した。

待っている間は置いてある雑誌を読んでいた。と言うより、読んでいる格好をしていた。周りからどう見られているかだけは考えない様にして、とにかく無心。

そして俺の名前が呼ばれる。

ネットで予約を入れた時に症状を伝えてあるからか、初診なのに特に説明もなくすぐにレントゲン撮影。その後治療室に案内された。凄く淡々としていてマニュアル的な対応だが、俺としては凄くうれしい。無駄な会話はしたくない。歯の治療だけでいい。

椅子に座って、症状の確認。簡単な説明。少しだけ虫歯になっているだけなので、少し削ってかぶせ物をして終わりだそうだ。他の歯も異常はなかった。

そしてこれから治療に入ると思った矢先、顔にタオルがかけられた。この歯医者では水が顔にかからない様に治療中は顔にタオルをかけるらしい。

昔かかっていた歯医者ではこんなことはなかった。目はつぶっていた方がいいのか。いつつむればいいのか。10年以上前にそんなくだらないことで悩んでいたのを思い出した。

顔を隠されているだけでこんなに歯の治療が楽になるとは思わなかった。

この日は麻酔をして虫歯を削ってから、かぶせ物が取れた歯の型を取る。その後、仮の詰め物をして終わった。30分もかからなかった。あっという間だった。

そして翌週、かぶせ物をつけて無事に治療は終わった。治療費は合わせて5,000円程。

今思うと、もっと早く歯医者に行っておけば良かったと後悔している。

結局、一番緊張したのは予約の連絡を入れた時だった。次に建物に着いて入り口に入るまでだ。後はなる様になる。2回目からは特に何も思わない。慣れたら平気らしい。

ちなみに、今回歯医者が平気だったのは、間違いなく治療中に顔にタオルをかけられていたからだ。今思うと、俺は院長以外の顔を全く知らない。見ない様にしていたのもあるが、歯科衛生士の顔や髪形すら覚えていない。とにかくタオルには感謝しかない。

歯医者にかかる事が一大イベントみたいになっている自分が情けないが、これからは虫歯になっても歯医者にかかることができると思うと少しだけほっとした。

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コメント

  1. tori より:

    読ませるね。この文章は売れると思う